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オンライン融資の最前線 第二回 :オンラインレンディングで日本の融資が変わる
融資

オンライン融資の最前線 第二回 :オンラインレンディングで日本の融資が変わる

Credit Engine: 内山 誓一郎
2018
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LENDY株式会社(旧商号:株式会社クレジットエンジン)の内山です。弊社では、AIによる与信審査を利用した日本初のオンラインレンディングサービス「LENDY」を提供しています。前回のブログではアメリカから始まったオンラインレンディングの歴史や海外の動向をお伝えしました。第2回目の今回は、オンラインレンディングでは海外に遅れを取っている日本国内に焦点を絞り、融資サービスの現状や将来の展望についてお話しします。

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オンラインレンディングを阻む、KYCの壁

日本は海外に比べ、すでに銀行の融資サービスが整っています。メガバンクだけでなく地方銀行、信用金庫、JAなど、地域に根ざした中小事業者までサービスが行き届いており、海外のように新たなプレイヤーが入り込む余地は比較的限られています。また、クラウドサービスの普及もまだ始まったばかりであり、オンラインレンディングが一般的になるまでにはもう少し時間がかかりそうです。

また、日本でオンラインレンディングをおこなうにあたりネックになりうるのが、KYC(Know Your Customer)と呼ばれる顧客確認です。マネーロンダリング等の犯罪を防ぐ目的で施行された犯罪収益移転防止法では、本人確認や取引目的の確認が金融機関に義務付けられています。しかし、オンラインレンディングのような非対面取引を前提としたものではないため、非対面での本人確認には郵送での書類のやり取り等、非常に多くの手間と日数を要します。その結果、そのやり取りの間に郵送物の受取ミスが生じたり、ユーザーのサービス利用意欲がなくなったりと、離脱が発生してしまうのです。

このKYCの壁をなくすことが、オンラインレンディングの発展には必要不可欠です。海外の例を挙げると、インドでは指紋認証による本人確認が認められています。一度情報を登録すれば即時に本人確認が可能となり、KYCの手間を省くことができるのです。現在日本でも、この犯罪収益移転防止法の施行規則改正が議論されており、将来的には、金融機関で本人確認が終わればその情報を別の事業者での本人確認に使えるようになる見込みです。(追記:2018年11月30日に犯収法の施行規則の改正が施行されました)また、そこからもう一歩進んで、本人確認済みのお墨付きを与えられるような第三者認証機関ができれば、KYCは更に楽になるでしょう。そうすれば、オンラインレンディングをはじめ、便利なフィンテックサービスが一気に広まっていくはずです。

日本における融資サービスの動向

それでは、銀行の融資サービスが行き届いた日本で、オンラインレンディングを始めるのは無謀なことなのでしょうか。実は、オンラインレンディングだからこそ入り込める市場があるのです。まずは、この10年ほどの融資サービスの業界動向を見てみましょう。

日本国内における、融資を取り巻く環境を語る上で重要となるのが、2007年の貸金業法の改正です。当時は、無闇に貸し付けをおこなう貸金業者が多数存在し、多重債務に苦しむ人が数多くいました。また、債権回収の仕方が強引だったりする悪質な業者の存在も問題視されていました。この状況を改善すべく施行されたのが、改正貸金業法です。これによって上限金利の引き下げや貸し付けの際の規制が強化されたほか、貸金業者への規制も強化されました。

この法改正により、2007年には1万1832社存在した貸金業社の数は、2017年には1865社にまで減少しています(日本貸金業協会サイトより)。これは上限金利の引き下げで以前ほど利益を出せなくなったために撤退した業者や、過払金の請求によって過去に収益として認識していた利息の返還義務が生じ、立ち行かなくなった業者が多くいたためだと言えます。

市場が浄化され、融資に対する一般消費者のイメージが回復する一方で、全体の融資額自体もこの10年間で大きく減少しています。これは個人向けに限らず、中小事業者向けの融資も同じ状況で、貸付残高は減少傾向にあります。この、従来、消費者ローンや商工ローンがカバーしていた中小事業者向けの短期・少額融資にこそ、オンラインレンディングのマーケットチャンスが存在するのです。

効率化されたオペレーションで、貸し手・借り手双方のコストをカット

現在、銀行が扱う融資は、長期・高額のものがメインです。それは、短期・少額の融資では、与信にかかるコストを回収できないから。銀行が融資をおこなう際には、営業担当者が事業者の財務諸表や事業計画書等を精査し、ヒアリング等調査をした上で、審査部とともに与信判断をおこなっています。一件の融資審査を通すのに何人もの人が介在し、数十万円単位のコストがかかっているのです。

一方、オンラインレンディングは非対面の融資であり、従来の与信審査にかかっていた人的コストを大きく削減できます。そのため、短期・少額融資でも十分に利益を生み出せるのです。

また、オンラインレンディングにおける効率化されたオペレーションは、融資額や期間に関係なく導入可能な技術です。例えば期限前返済をする際、従来の融資では、まず事業者から銀行の担当者に返済日を伝え、銀行から送られてくる返済書類に押印して返送し、それを銀行側が承認して初めて返済が可能となります。これがオンラインレンディングならば、画面上でボタンを押して期限前返済を申し込むだけで、自動的に口座から引き落とされて完了です。オンラインレンディングは、貸す側・借りる側双方にかかる労力を大幅に減らせるのです。

利益減に悩む地方銀行の融資に、新たな可能性がひらかれる

日本の銀行、特に地方銀行は、「従来どおりの融資では収益力が低下する」という意識が強くなってきているように感じます。長引くゼロ金利政策の影響に加え、借りる側は様々な金融機関の中から融資元を選べるため、金利競争が起こって融資による利益が下がり続けているからです。しかし、地方銀行にとって融資とは、「地域を活性化させてお金を行き渡らせる」という存在意義そのもの。利益が出ないからと言ってなくすことのできない、必要不可欠なサービスなのです。

普通の攻め方をしていては利益の出ない中、どう収益を上げ、コストを下げるかが課題となる地方銀行にとって、オンラインレンディングは選択肢の一つになり得ます。先に述べたように、銀行側の効率化によるコスト低下が一つのポイント。そして借りる側にとっては、手間がかからずすぐに借りられるという付加価値があるために、比較的金利を高く設定しやすいというのが、もう一つのポイントです。

海外ではすでに銀行とオンラインレンディングのスタートアップが提携し、協業しながら互いに成長しています。それは日本においても同じこと。銀行がオンラインレンディングを導入することで、新たな可能性が広がっていくのです。次回は、実際に銀行がオンラインレンディングを導入するにあたり、押さえておきたいポイントをご紹介します。

 次回へ続く

オンライン融資の最前線シリーズ


オンライン融資の最前線 第一回 : アメリカから始まった、新たな融資の形
オンライン融資の最前線 第三回 : オンラインレンディングを導入する際の重要ポイント

レンディ事例を読む

                     

2018年10月25日に開催されたFIT(金融国際情報技術展)のマネーツリー主催セミナーで、LENDYの内山様にご登壇いただき「オンライン融資」についてご紹介いただきました。その際の登壇資料を公開しています。

LENDYのFIT登壇資料をダウンロード

筆者プロフィール

Credit Engine: 内山 誓一郎

内山誓一郎 株式会社クレジットエンジン 代表取締役社⻑。 慶應義塾大学経済学部卒。 2007年より株式会社新生銀行において、不動産業を中心にコーポレートローン、ストラクチャードローン業務に従事。その後、仙台市に転居し、東日本大震災後の復興支援事業の立ち上げをおこなう。 2012年より米国UCLA Anderson School of Businessに留学し、在学時には現地のベンチャーキャピタルでのインターンや、仮想現実(AR)関連技術のスタートアップに参画。帰国後株式会社マネーフォワードに入社し、業務支援サービスの営業や事業開発、家計簿サービスの事業提携などに従事。 2016年に株式会社クレジットエンジンを創業。2017年1月より、オンラインレンディングサービス「LENDY」を提供。 2018年7月には、三菱UFJファイナンシャル・グループのアクセラレータプログラム「MUFG DIGITALアクセラレータ」でグランプリを受賞。三菱UFJ銀行と業務提携を締結し、「クレジットエンジン・プラットフォーム」※の活用を検討している。 ※クレジットエンジンが提供する、LENDYの仕組みをもとに金融機関がオンライン融資サービスを低コストで提供できるサービス‍

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