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日本と違う世界の常識、少子高齢化が進むシンガポールの政策
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日本と違う世界の常識、少子高齢化が進むシンガポールの政策

花輪陽子
2018
08
10

ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。日本で生活をしていると、自国の制度や仕組みが当たり前のように感じてしまうものですが、外国での生活を体験すると、日本の常識は、他国からすれば非常識であることがあります。ブログで数回に渡り、日本の常識と世界の常識について紹介していきたいと思います。他国の制度や仕組みに目を向けて、ぜひご自身の資産運用の参考にしてください。

私は2015年から夫の転勤がきっかけで、家族とシンガポールに移住しました。拙著『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』では、その賢くて合理的な小国の知恵を記しています。シンガポールは日本同様資源が少なく、近年は少子高齢化の兆候が著しい国です。それでも、高い経済成長を維持しており、国民は老後の不安が少ないのです。日本もシンガポールに見習うべきところは多そうです。その違いは、政府の政策からきていると感じています。今回は、そんなシンガポールと日本の政府の政策との違いをご紹介します。

経済成長を最優先にしたシンガポール、唯一の武器は「賢さ」

米朝首脳会談のホスト国を行なったことでも注目をされているシンガポールとはどんな国なのでしょうか。

シンガポールと日本とで決定的に違うと感じることは「政治のリーダーシップ」です。一党独裁で首相の権限が非常に強く、初代首相のリー・クアンユーが真っ白のキャンバスにデザインをした国家が現在のシンガポールと言っても過言ではありません。

1965年にマレーシアから追放され、水などの資源もままならないまま独立国家にならざるを得なかったシンガポールを、現在の姿まで導いた建国の父が、リー・クアンユーなのです。

当時のシンガポールの武器は「賢さ」だけ。日本のように海という城壁に守られている国ではないために、マレーシアなど近隣の大国からの攻撃を受ける可能性も高く、安全保障の確保や水や食料もおぼつかない状態から国民を食べさせていく必要がありました。

余裕がない状態からのスタートだったために、マスメディアの管理など表現や言論の自由を抑圧し、徹底的な能力別教育により国家を構築するためのエリート官僚を確保し、生存のために何よりも経済成長を最優先にさせたという事情があります。その結果、50年間で毎年平均7.8%の経済成長を実現させました。

国を挙げて外資を誘致し、外資主導で雇用創出や技術導入を計る成長スタイルであったこと、国民への社会保障は必要最低限で効率的に行うなど、日本とは大きく異なる政策がとられました。

日本よりも少子高齢化が進むシンガポールの対策

シンガポールの平均寿命は男性で80.4歳、女性では84.9歳(2014年)で合計特殊出生率は1.25(日本は1.42/2014年)と、日本より少子高齢化が深刻ですが、女性もシニアも活躍できる社会を実現しており、さらに優秀な外国人労働者を確保することで、労働力人口減少の問題を解消しています。

シンガポールの労働力の特徴は主に3つあります。

・働く女性は約7割以上 
狭い国土でもオフィスビルなどを活用し保育所確保で待機児童問題はゼロ、家事労働サービスが充実しています。
・働くシニアの増加
65歳以上の労働力率は36%で毎年増加、雇用主は賃金を減らすことなく67歳まで継続雇用を申し出る義務があります。
・人口の4割が外国人労働者
専門技術者、研究者、弁護士、医師、会計士などの高技術労働者を確保しており、高技術労働者は永住権も取得しやすいです。

シンガポール政府は労働力の重要性をよく理解しており、それに合わせた制度設計をしているのです。

人口減少に影響されない社会保障 

日本では年金や医療保険の保障が手厚いですが、シンガポールでは強制自動天引き貯蓄のようなシステムで、自分自身で将来のお金を貯めていくというしくみになっています。また、政府が管理する中央積立基金(CPF)が医療費用、持ち家取得、老後生活に備えた強制貯蓄の役割を果たしています。

CPFは個人の口座ですが、雇用主と労働者が共に資金を拠出するというスキームになっており、55歳以下の労働者は収入の20%、雇用者は17%を拠出し、収入の3分の1以上の金額を将来に備えて積み立てるしくみになります。

この制度はよくできており、複利を利用して最も効率的に貯蓄できるようにするために若い頃の拠出率が高くなっています。

CPFでは持ち家取得のための口座を利用でき、これは持ち家率向上にも貢献しています。現在シンガポールの持ち家率は9割程度にも及びます(日本は約6割)。家という財産があると愛国心や社会の安定につながり、老後生活の不安も軽減できるという考えから、政府が持ち家を推進しているからです。

対する日本はというと、国家予算の3分の1(32兆円)が社会保障費の支払いに充てられている上に、急速な高齢化に伴い社会保障費は毎年1兆円規模で増大しています。社会保障費収入は横ばいで推移しているために、その多くは税金と借金で賄われています。少子高齢化は今後ますます進むために財政が更に深刻化することが予測されています。

長生きリスクもあるので、「人生100年時代」を見据えたより長期的なライフプランが必要になります。世代によっては逃げ切れるかもしれませんが、更なる給付のカットや保険料の引き上げが行われる世代は自分で準備しなければならないお金が膨らみます。

日本でも確定拠出年金制度など老後資金を自力で作る制度が整いつつあります。今後はシンガポールのように自助努力でもお金を作る時代になっていくでしょう。また、労働力不足を解消するために女性や高齢者も働くことが求められます。少し先をいっているシンガポールから見習うべきことはたくさんありそうです。

次回は、シンガポールを支える優秀な人材を育てるために構築された徹底的な能力別教育について紹介したいと思います。お楽しみに。

筆者プロフィール

花輪陽子

外資系投資銀を経てFPとして独立。著書に『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』、監修本にジム・ロジャーズ著『日本への警告 米中ロ朝鮮半島の激変から人とお金が向かう先を見抜く』 (講談社+α新書)など。

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